池袋から西武線で約20分、保谷駅はすっかり都市の様相です。駅前には数々のお店も並び、ここから歩いてほんの15〜20分で目当ての雑木林があるとは初めての人にはなかなか思いつかないかもしれません。
私の所属する「西東京生態系研究会」が管理している保谷北町緑地は、東京都の保全地域に指定されています。かつては放置され、荒れるに任せていた林も、4年前から定期的に会の方々が月に1回管理作業を行った結果、今では、かつての武蔵野の雑木林を彷彿させるまでに回復してきました。
その当時、この林を管理していたのは、今はもうなくなってしまった「ジャパンエコロジースクール」という専門学校の学生さんが中心だと伺いました。皆さんは「My鎌」や「My鋸」を持参したそうです。今の管理は刈払機を使えば草もあっという間に刈れますが、人力での作業はさぞ大変だったことと想像します。そのような苦労の跡が今のこの林なのですね。そんな皆さんの苦労の跡を私たちが絶やすことはできません。
最近は、雑木林を含む里山の重要性が見直されつつあります。しかし、実際に里山に行ったり、管理作業を行ったりした人はどれくらいいるでしょうか? 意外と少ないのではないでしょうか? なぜなら、里山自体が減ってしまったからです。里山は、昔から人と生きものの「共存」の領域として機能していました。薪炭や堆肥を使わなくなったために、里山は放置され、人の領域(都市)と動物の領域(奥山)の緩衝地帯としての機能を失いました。最近頻繁に野生動物が現れるのも里山の崩壊と関係があるのかもしれませんね。
さて、本日の作業はというと、まずは林床一面に積もった落葉の清掃です。熊手を用いてかき集めます。例年に比べ今年は温かいからか、まだ少ないようですが、それでもスゴイ量!です。集めても集めても一向に減る機会がありません。ほんのわずかの面積なのに、雑木林の生産量ってスゴイんですね。
その後は、先月に予め作ったおいた「落葉溜め」に積んでおきます。そうするとやがて「堆肥」として利用できるようになります。こうやって「土」に還っていくのですね。来年夏には、カブトムシを始めとする多くの虫たちがやってきそうです。
東京にもこういう場所があるというのは、なんとも言えず嬉しいものです。先輩がいつも言っていたように、「自然の大切さはその場所を訪れることによって実感できるものだ」としみじみ思います。それでも、当初から管理を続けている方に伺うと、周りには多くの家が建ち、今後も近くの畑が取り壊されて道路が建設されるそうです。開発の波はこういう場所にも押し寄せているのですね。そこに住む人にとっては生活が便利になるので一概に反対とは言えない部分もあるかもしれません。しかし、それと引き換えに、昔ながらのものが消えていく。難しい問題です。
また、林の中にも、樹木が削られていたり、整頓して並べられていた丸木も無造作に転がされていたりします。虫を捕るために、管理する人の苦労も考えずに行った人がいるとは、悲しい限りです。里山の崩壊は、かつての自然を愛したという日本人の心まで崩壊させてしまったのでしょうか?
そんなふうに考えたら、里山を守ることは、かつての日本の原風景を守ることにつながる気がしてきました。いつまでも人々の心に残り続けるような雑木林を目指して、これからも管理作業を続けていきたいと思います。皆さんも、私たちといっしょに参加しませんか? 保谷でお会いできることを楽しみにしています。